『とある飛空士への夜想曲 上・下』 (犬村小六 / ガガガ文庫) :感想

 『とある飛空士の追憶』から始まる本シリーズですが、本作は強烈な印象を私に植え付けてくれました。

 日本人だからこそウケる内容だとは思うのですが・・・・・・真のサムライがここにもいました。


 神聖レヴァーム皇国と戦う、帝政天ツ上。

 
 自分たちを猿と呼ぶレヴァームに人間としての誇りと意地を見せるため、戦闘機・真電を駆る一騎当千のパイロットたち。


 その中で抜群の実績を誇る撃墜王、千々石武夫が切望するのは、己を一度撃墜したレヴァームの「海猫」を墜とすこと。

 そのことだけに全てを賭ける千々石。


 上巻では、ユキとの出会いを含め、千々石が戦闘機乗りになるまでのエピソード、そして撃墜王としての活躍も描かれ、全体として序章であるような感じもしますが、下巻が凄い。


 これまでのシリーズの中でも圧倒的な緊迫感とヒリヒリする感じを味わえたと思います。

 どう考えてもあり得ないような展開や司令官判断もあったようにも思いましたが、そういうモヤっとしたものを吹き飛ばすような圧倒的な力を感じました。



 単にカッコイイなんて言えない、どう考えてもバカとしか思えない生き様。

 でもそんな生き方しかできない千々石に対し、ある種の羨望を覚えます。



 下巻になるともう絶望的な戦況になっていきます。

 圧倒的な物量で侵攻してくる神聖レヴァームに対し、防戦一方となる天ツ上という構図は、まさにアメリカ対日本そのもの。

 そして、戦闘機の性能も遂にレヴァームに超えられてしまい、パイロットの技量で補うのも限界を超えてしまっている。

 ひとつ、またひとつと拠点が落とされていく絶望感は、太平洋戦争を思い起こさせ、読んでいても辛くなってきます。

 
 圧倒的な千々石の技量をもってしても、認めざるを得ない限界。
 
 ひとり、またひとりと墜とされていく戦友たち。


 そして、そんな千々石に対し、昔に戻ろう、軍艦島にいた頃に戻ろうと懇願するユキ。


 ユキの想いと戦友たちの思いを胸に、千々石は最後の決戦の空に向かう!!



 どちらが勝っても哀しいですよ・・・・・

 海猫(狩野シャルル)は第1作『とある飛空士の追憶』の主人公ですし・・・読者としても思い入れもあり・・・。


 戦争の虚しさをこれほど感じたのも久しぶりです。

 とにかく戦争というものが嫌になります。
 
 何も残らない、何も残らない、何も残らない。

 残るのは、哀しみだけ。


 しかし、その中で光を放ったのが千々石だった、ということなのかもしれませんが・・・・。


 いろいろな思いを感じることができる作品でした。



とある飛空士への夜想曲 下 (ガガガ文庫)
小学館
2011-09-17
犬村 小六


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