『Fantasy Seller』(畠中恵、森見登美彦他 /新潮社) :感想

 本書は『Story Seller』シリーズの番外編。
 一言でいうと、異世界モノ、でしょうか。
 全8篇の、ちょっと不思議だったり、ちょっと怖かったりする物語たちです。

 日本ファンタジーノベル大賞受賞作家さんたちの作品が集められていました。


 畠中恵氏の「太郎君、東へ」は、坂東河童の女親分・禰々子が、ここ最近、坂東太郎の機嫌が悪い理由を探るお話です。
 
 禰々子は、気っ風がよくて、チャキチャキっ子

 太郎は、体はでかいのにしばしばグジグジ。

 ヤラレ役の蘇鉄河童衆のおかげで禰々子の粋っぷりが引き立つ引き立つ(笑)。


 禰々子が、太郎にダメ出ししたり、喝を入れたりする姿は、姐さんがダメな子分を諭しつつも見守っているような印象を受けますが……実体は河童と利根川ですからねえ(笑)。なんかシュールです。


 何とはなく懐かしの日本昔ばなしを思い出させるお話でした。

 地の文は、市原悦子さんに朗読していただきたいですね~(笑)。


 人と河童と大河のふれあい物語。

 タイトルの意味は、想像はつくかもしれませんが、最後で明らかになりますよ。



 堀川アサコ氏の「暗いバス」。

 
 午前2時頃でも運行されている薄気味悪いバスの中で、語り部の男と乗客たちの会話を通じて、徐々に物語の真相が明らかになっていく構成です。

 違和感を覚えつつ読み進めると……ヒタッ、ヒタッ、と真相が現れてくるのがいい感じです。

 ちょっとホラーサスペンスなテイストのお話でした。

 ホラーは苦手な私ですが、これは好きですね。



 森見登美彦氏の「四畳半世界放浪記」は、森見作品たちが生まれた背景を森見テイストたっぷりに、あっさりと綴っていくお話です。

 創作のきっかけって、先日読んだ万城目さんもそうですけど、ほんとふとしたことから生まれるんですねえ。

 まあ、これも森見氏のフィクションなのかもしれませんが(笑)。


 読んでいて思いましたが、森見氏は、いつまで経っても四畳半世界から出てこない予感(笑)。


 宇月原晴明氏の「赫夜島」(かぐやじま)は、主の命を受けた平将門が、かぐや姫の遺した秘薬を探し出すため、富士に向かうお話です。

 巷間に伝わる伝説や史実も微妙にブレンドされていて、ストーリーにちょっとした厚みを加えています。


 将門も純友もカッコいいし。

 幼い頃読んだ歴史漫画での彼らはどちらかというと悪役設定だったので、新鮮でした。

 小さい頃刻まれた印象って引っ張りますよね~。フェアな目で見られるようになるのにちょっと努力が必要になったりしますし。

 最初にこの物語を読んでいたら将門たちはちょっとしたヒーローとして記憶されたのかも(笑)。


 でもまあ、史実を知っているからこそ、より楽しめるタイプの作品かなと思います。



 その他4作品も含め、ちょっとした異世界を短い時間で楽しめる本でした。



【収録作品】

・畠中恵   「太郎君、東へ」
・仁木英之  「雷のお届けもの」
・森見登美彦 「四畳半世界放浪記」
・堀川アサコ 「暗いバス」
・遠田潤子  「水鏡の虜」
・紫野貴李  「哭く戦艦」
・石野晶    「スミス氏の箱庭」
・宇月原晴明 「赫夜島」


Fantasy Seller (新潮文庫)
新潮社


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