『逆軍の旗』(藤沢周平 /文春文庫) :感想

 本作では、武家モノの短編4篇が収められていますが、明智光秀を主人公とした表題作「逆軍の旗」が一番印象深かったです。


 本能寺の変の前夜から物語が始まるのですが、光秀の葛藤と決断に至る心情が深く描かれています。


 そして事成ったあとに襲ってくる焦燥感。

 グズグズしていると「あの男」が京に戻ってきてしまう。

 筒井順慶を待ち焦がれる思い。

 そして、絶望。


 光秀を描いた作品は数多くありますが、本作も短編ながら光秀の魅力が十分に引き出されていると思いました。




「上意改まる」は、藤右衛門と郷見、犬猿の仲である家の者同士の悲恋物語かなと思わせる始まり方でしたが、権謀術数渦巻く家中の争いの物語へと発展していきます。

 
 片岡家を陥れようとしているのは誰なのか……そして、主君を諫めたのは意外な人物。

 はてさて、片岡家は陰謀から逃れられることができるのでしょうか?!


 藤右衛門を想うヒロイン・郷見はあまり登場してこないのですが、最後まで存在感がありました。
 
 作中での立ち位置が絶妙というかいい感じでした。



「二人の失踪人」は、父を浪人者に殺された兄弟の物語です。


 事件から5年経ち、出奔した2人。
 
 見事、仇を討つことができるのか?!


 ラストはちょっとびっくりでした。

 こういうのもありなのかあ、って思いましたねえ。

 藤沢御大がやると味が出てきますが、私が無思慮に真似したら叩かれそう(笑)。



「幻にあらず」は、謙信公以来の名家であったはずの米沢藩上杉家の窮乏と、藩政改革を描いた物語です。


 窮乏に次ぐ窮乏。

 打つ手に行き詰まり、閉塞感と不満だけが膨れ上がる中、必死に藩の立て直しに取り組む家老の竹俣当綱と藩主・治憲。

 
 当綱が立て直しに取り組み始めてから30年。

 しかし、結果が出ない。

 立て直しなど、幻に過ぎないのか……。


 やってもやっても結果が出ないと、凄まじい疲労感と不満が膨れ上がりますよね。

 破綻寸前であれば尚更のこと。


 名家の誇りと現実の狭間で苦しむ藩士や重職たち。
 
 担当のクビをすげ替えても結果は変わらない無間地獄。


 読んでるだけで苦しくなってきます。


 そんなとき、うっすらとした光明があることは生きる支えになりますよね。



 いろいろ考えさせられるラストでしたね~。

 今の我が国にもちょっと重ね合わせてみたりしちゃいました。





 武家としての誇りと、そしてそれ故の悲哀を感じることのできた作品集でした。

 静かなところで読むのがオススメです。



逆軍の旗 (文春文庫 (192‐11))
文藝春秋
藤沢 周平


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