『Story Seller』(新潮社ストーリーセラー編集部 /新潮文庫) :感想

 「面白い話、売ります」という自信あり気なコピーが表紙に書かれている本作ですが、伊坂幸太郎氏、近藤史恵氏、有川浩氏、米沢穂信氏等の作品が詰まった、オール読み切り集となっています。

 この本をキッカケに気になる作家に出会えるといいですね……そんな狙いも込められた本のようです。


 味わってみないと好みの作家かどうかはわからないですし、とりあえず短編で試食というのが、私には合っているようで、楽しくつまみ食いできました。また読んでみようという作家さんもいましたし。



 私はこれまで、近藤史恵さんの作品は読んだことがなかったのですが、『プロトンの中の孤独』は私の感覚にフィットしました。


 ロードレースという、あまり日本人には馴染みがない自転車競技を題材にしているのですが、『Over Drive』というマンガでロードレースの熱さを知った私には、これはもう刺さりまくりです。


 ライバルチームとだけでなく、仲間うちでも駆け引きが繰り広げられ、そして妬みと羨みが混じり合ってドロドロしつつも、でも男たちはロードレースが好きだし辞められない……という男たちの物語。


 スポーツですからね、最後は爽やかに終わりましょうよ、という私のニーズを満たしてくれた作品でした。

 ロードレースに興味がない方の目にはどう映るかな、というところはありますけど。地味な印象を受けるかもしれません。



 ところで、男性作家は男性視点、女性作家は女性視点の作品が多いと思うのですが、この作品と、米沢穂信さんの『玉野五十鈴の誉れ』は作家さんの性別と逆の視点での作品になっています。


 女性が男性の心情を、男性が女性の心情を描き切るというのは相当難しいように思うのですが、そんな思いを軽く吹き飛ばす筆力があると思います。

 プロってホントにすごいですねえ(笑)。


 さて、その米沢さんの作品ですが、これまた私が好きな、大正ロマンや昭和初期の雰囲気の物語。

 静岡の名家の娘、純香とその女中・五十鈴との関係が描かれています。

 非日常的な日常を過ごし、非現実的な現実に翻弄される純香の運命やいかに?・・・というお話なのですが、思わず、「お気を確かに!」と言いたくなるようなお婆様の言行から目が離せません(笑)。



 読後は、未来が生まれたような、閉塞感は打破されたようなスッキリ感はありましたが、重たいものが胃のあたりに残るような感覚になりました。
 
 米沢氏の作品は、まだ「小市民」シリーズしか読んでいないのですが、私のツボに刺さる時代の物語まで書いてしまう方なのですね。

 これは今後もフォローせざるを得ません(笑)。



 取り留めもなく書いていたら長くなってしまいましたので、あと一言だけ。


 有川浩先生、電車の中で涙を堪えるのに必死にならなければならないような作品を書かれるときは、涙腺注意と書いておいてください(笑)。



○ 収録作品一覧

伊坂幸太郎  「首折り男の周辺」
近藤史恵   「プロトンの中の孤独」
有川浩     「ストーリー・セラー」
米澤穂信   「玉野五十鈴の誉れ」
佐藤友哉   「333のテッペン」
道尾秀介   「光の箱」
本多孝好   「ここじゃない場所」


Story Seller (新潮文庫)
新潮社


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