『大いなる助走』(筒井康隆 /文春文庫) :感想

 先日、第144回直木賞受賞作が発表されましたが、本作は、その直木賞が欲しくて欲しくてたまらなくて思い詰めてしまった青年・市谷京二を描いた物語です。



 東野圭吾氏の『黒笑小説』を読んだ際に、テーマが似ているということでご紹介いただいたご縁で読んでみました。
 
 『黒笑小説』に載っていたのは、文学賞が欲しくてたまらないベテラン作家の悲哀を描いたコメディでしたが、本作はコメディなんて枠は踏み潰してしまっている勢い強烈な風刺です。



 本作では、文壇や同人誌界は凄まじい腐臭を放っているもののように描かれていて、筒井氏の怨念(?)の凄まじさを感じます。

 筒井氏は、3回直木賞候補になり、こき下ろされて結局一度も受賞できなかったそうですが、その恨みを本作で表したそうです。


 氏曰わく、「私怨ばらしでない文学があるか」(笑)。



 連載当時には、作中に出てくる選考委員のモデルとなっている、とある大御所が連載差し止めを出版社に申し入れたそうで……それだけで本作のドギツサがわかるというものです(笑)。


 どの選考委員が、実在のどの作家に当たるかを想像するのもおもしろいかもしれません。

 私には全くわかりませんでしたが(笑)、わかる人にはよくわかるそうですよ。



 ラストシーンで、市谷が所属していた同人雑誌「焼畑文芸」の編集者が抱いた感慨……われわれ同人作家というものは何をしようとしているのか、同人活動なんていつまでも飛び立てない大いなる助走に過ぎないのではないか-----というのは、作家デビューを目指して足掻いている人にはキツい現実のように思いますが、このことは文筆の世界に限った話ではないのではないでしょうか。

 準備段階にも意味があるとはキレイゴトを言ってみても、飛び立てる見込みのない助走は相当ツラい。

 でも、今更止められない。

 そういうやり場のないジレンマを痛切に感じる作品でもあります。


 文筆業とは縁遠いですが、私自身、いつまでたっても助走というか惰性で生きているだけのような気もしてきて………まあ、いいや、何とかなるだろう(笑)。



 登場人物のテンションがみんな高くて、一気にガーッとストーリーが進むので、ラストの寂しげな感じが強烈なコントラストになっていると思います。

 文壇を大いに騒がせたという本作。

 直木賞受賞作が発表されたこの時期に読んでみるのもオツなものかもしれませんよ。


○ リンク
『黒笑小説』 (東野圭吾)
http://kemochime.at.webry.info/201012/article_22.html




大いなる助走 <新装版> (文春文庫)
文藝春秋
筒井 康隆


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この記事へのコメント

2011年01月25日 22:32
ご無沙汰しております!
筒井先生は昔から好きでした。
この「大いなる助走」も学生のときに読んで以来なので懐かしかったです。
断筆宣言の紆余曲折もあり、波乱万丈な作家の方ですね。
2011年01月25日 23:16
kemochimeさん、感想ありがとうございます。本当にうれしいです(^_^)
筒井先生の真骨頂というべき、内容ですから(^_^)
西原先生と筒井先生といい異端児と言われる方が本当に好きで、、、しょうがいないんです。この人たちは、異端児やない。この人たちは本音で生きて、それを表現して、面白くて、泣けて、明日の自分を元気にしてくれる人たちやと学生時代が強く思ってました。
でも、この時期にこのブログを掲載されるなんて、kemochimさんも本当にしゃれが分かってられる人ですね。
さすがですよ~!
2011年01月26日 10:28
komechimeさんのご紹介でなんか
読んでみたくなりました~
そういえば“黒笑”は読んでないのですが
私が初めて読んだ東野圭吾の作品は
“毒笑小説”という短編でした。
すごく笑えたので私ずっとこの方って
おもろいこと書く人だって思ってました。
ミステリー作家なんだって分かったの
だいぶ経ってからでした
2011年01月26日 22:33
トムさん、こんばんは。ご無沙汰でございます!
コメントありがとうございます。
断筆宣言をはじめ、ホント話題には事欠かない先生のようですね(笑)。
もう30年近くも前に出された作品のようですが、筒井氏は未だに根に持ってそうですね(笑)。強い気持ちを持っているからこそ、様々な作品を世に送り出せるパワーがあるんでしょうねえ。
2011年01月26日 22:38
たかじいさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
ご紹介ありがとうございました。
筒井康隆氏からは、本音をガツンとペンにぶつけているパワーを感じます。
本日は、『アホの壁』も読んでみたのですが、アホを真剣に語っているのがこれまた愉快でした(笑)。
まだ未読作がいっぱいあるので、楽しみが増えました。
2011年01月26日 22:40
まっちょさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
『毒笑小説』は未読なのですが是非読んでみたいと思っています。なお、東野氏の『○笑』系に比べると、本作はドキツさが半端ないですよ(笑)。
2011年01月27日 06:50
(*゚ー゚)vおはようございます♪
朝から筒井康隆氏、偉いものを見つけてしまった!
「俗物図鑑」を読んで中毒になってしまった、若気の至り。kemochimeさんのお蔭で、少しずつ本読みモードに向かっています(微笑)
2011年01月27日 22:18
メロンパンさん、こんばんは。コメントありがとうございます。

朝から筒井氏というのはまた何だか濃ゆい感じもしますね(笑)。『俗物図鑑』もまだ未読なんですよね~是非とも読んでみます。

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